流木ピンホールカメラを手にして

バルト海沿岸で拾われた流木と貝殻とシーグラスと琥珀で作られたこのピンホールカメラは、アーティストSergey Lebedevさんの作品。この小さな穴の開いた木の箱が、これまで手にしたカメラの中で一番しっくりきている。

実は私はレンズやカメラにはあまり興味がないということをやっと認めることができた。手元にあるライカはこれからも使っていくけれど、さらにカメラやレンズが欲しいとは思わない。どうやら私はそこには興味がない。

私はいつまでたってもカメラの仕組みが覚えられないし操作できない。それは、私がそこに興味を持っていないからだということがやっとわかった。「ただ穴が開いただけの木箱が自分にとってまったく無理がなくて愉しい」という体験がそのことに気づかせてくれた。

私はデジタル画像を加工することにもまるで興味がない。なので、デジタルカメラで撮った写真はいつもほぼそのまま。デジタル一眼レフカメラは特に操作できなくて持て余すので、設定は常にほぼ同じ。

で、それでいいということだ。興味がないことをする必要はない。苦痛がないこと、無理がないこと、自然なことだけをやっていればいい。それが本当にやりたいことなんだから。

 

Sergey LebedevさんのWebサイト → Pinholeworks

彼のインタビュー記事
Driftwood Pinhole — An Interview With Camera Maker Sergey Lebedev

Sergey Lebedev Handcrafts Unique Pinhole Cameras Using Driftwood

 

内も外も自然

過去にも何度か書いたけれど、木は話しかけてくる。割と乱暴に、遠慮なく、いきなり言葉ではないエネルギーでにゅっとこちらに入りこんでくる。木は一切暴力的ではないが、木には人的な優しさや気遣いなどはない。

木から放たれるメッセージは自我の範疇を超えているので、思考によって理解することはできない。だから、たとえば「木がこんな風に言っている」などというのは、その人がただそう思いたいだけのことだ。逆に言えば、どんな風に解釈することもできる。つまり、夢と同じように象徴的だ。

木のエネルギーがいきなりにゅっと入ってくると、思考よりも先に肉体が反応する。自我は戸惑うけれど、肉体は即座に反応して動き出す。それをただ感じているのはただ気持ちいい。

つい自分の外側に自然を見てしまいがちけれど、身体の内側にもまったく同じように自然現象が起きているということを実感して味わうのは、意味もなく愉しい。

フェルナンド・ペソアのこと

Today marks the 83rd anniversary of Fernando Pessoa’s death. I clearly remember the moment when he visited me in my dream about four years ago. What he said to me was very vague but it still inspires me.

11月30日はフェルナンド・ペソアの命日。

四年前、眠りに落ちる間際の曖昧な意識の中に彼が現れたことは忘れられない。彼から何かを託されたように感じたけれど、私はそのまま眠りに落ちた。その後に見たのは海に浮かぶ船の夢だった。私が初めてポルトガルを訪れたのはそれから2ヶ月後のこと。

 

“I See Boats Moving” – Fernando Pessoa

I see boats moving on the sea.
Their sails, like wings of what I see,
Bring me a vague inner desire to be
Who I was without knowing what it was.
So all recalls my home self, and, because
It recalls that, what I am aches in me.

Costa Nova, Aveiro, Portugal

私の中の海

アウトドア活動にはまったく興味がなく、完全にインドア派で引き篭りがちな性分だが、なぜか冬の海には昔から惹かれてやまず、実際にこれまで何度か旅をしてきた。

風は痛いほど冷たく、空は淡く重く曇り、周囲に人の気配はない。
ただ繰り返す波の音と鳥たちの声だけが聞こえる。

私の中にある海のイメージ。

Costa Nova, Aveiro, Portugal

Leica Gallery Pragueにて

ライカギャラリープラハで開催中のサトウヒトミさんの写真展へ出かけた。

私が彼女の写真から感じるのは、とらわれのない自由で伸びやかなまなざし。眺めていると、私もまた純粋な好奇心と衝動に従って動いていこうと思わせてくれる。

今日はヒトミさんご本人にもお会いできていろいろとお話を伺うことができた。彼女自身もまた軽やかでリラックスした雰囲気を纏う美しい方で、まるで動物のようにしなやかにご自身の心に従っておられるのが伝わってきた。

 

また、会場ではチェコの写真家ダニエル・シュペルル (Daniel Šperl)氏とばったり遭遇。「あ!」とお互い驚いてすぐ、数ヶ月前にフォトシュコダ(FotoŠkoda)で彼から「近々日本の写真家の写真展がある。」と教えてもらったことを思い出した。今回のサトウヒトミさんの写真展は、彼がキュレーションしていたのだった。

 

今日は他にも思わぬ再会があった。写真展のパーティーに集まった人々の中には、プラハの日本料理店「Miyabi」のオーナーで茶道家でもあるダリアさんの姿もあった。4月に彼女の店を訪ねた際にとても良くしてもらって以来だったので、久々にご挨拶することができた。

ギャラリーの閉店後、たまたま同じ方向に歩くことになった彼女から「うちの店でお茶でも」と誘われ、上生菓子とカプチーノをいただくことに。そこからなぜか話題が尽きず、後でお互いにびっくりするほどさまざまなことを聞いたり話したりしているうちに、あっという間に数時間が過ぎてしまった。

 

「ほらね、君は一人で出かけると必ずおもしろい人に出会ったり、おもしろい展開に巡りあったりするでしょう。だから一人でどんどん出かけるのがいいんだよ。」と、帰宅後にまたパートナーがそう言っていた。

今日もまた嬉しい出会いと再会が重なるおもしろい一日だった。

鉄道橋を歩いて渡る

ヴルタヴァ川沿いを歩いていたら、鉄道橋を歩いて渡ることができるのを発見した。この辺りはよく歩いていたのに、これまでまったく気づかなかった。

橋を渡っているうちに電車がやってきた。友人も私も思わず興奮してしまい、慌てて写真や動画を撮った。目の前を通過していく電車の迫力にますますエキサイトして、さらに何度か電車がやってくるのを待つことに。

近いうちにカメラと三脚を持って再び訪れようと思う。

 

火薬塔の上から

プラハ市民会館を出た後は、隣に建つ火薬塔へ昇りましょうということになった。既に日は沈んでいたけれど、夕焼け空にプラハ城といくつもの尖塔がシルエットとなって浮かび上がる様は美しい。

今回ご一緒している女性とは、まだお会いしたばかりだというのに話がはずんで止まらない。年齢や立場の違いなどによる隔たりは全く感じられず、すっかりリラックスして過ごさせていただいている。きっと彼女のオープンであたたかなお人柄によるものだろう。

おかげさまで、初の案内役を任された緊張もすっかりほどけて、彼女をご案内をしながら私自身もプラハ観光を楽しんでいる。

 

プラハ市民会館 – Obecní dům 見学ツアー

昨日からプラハに滞在されているお二人をご案内しながら、私自身も久しぶりにプラハ観光をしている。今日は午後から音楽博物館を訪ねた後、プラハ市民会館(Obecní dům)へ。

プラハ市民会館は世界的に有名なアール・ヌーヴォー様式建築。実は、私自身も内部を見学したのは今日が初めてのこと。内部はガイドツアー(英語・チェコ語)に参加して見学する。日本語で書かれたパンフレットの貸し出しもある。

チェコを代表する芸術家たちが手がけた美しい絵画や装飾を見ながらガイドの熱心な説明に耳を傾けていると、この地に生きた・生きる人々の思いが胸に迫る。

 

スラドコフスキー・ホール(Sladkovský Hall)はプラハ市民会館の中で唯一の装飾が成されていない部屋。 しかし、職人が手作業で作り上げたというシャンデリアやカーテンが美しい。チェコのジャーナリストであり政治家でもあったカレル・スラドコフスキーの名が付けられている。

Sladkovský hall of Prague Municipal House

チェコの国樹である菩提樹の装飾が施されたリエガー・ホール(Rieger Hall)には、画家マックス・シュヴァビンスキーの壁画がある。描かれているのは作家ヤン・ネルーダや画家ミコラーシュ・アレシュ、作曲家のベドジフ・スメタナアントニーン・ドヴォジャークなどのチェコを代表する芸術家たち。

Rieger Hall of Prague Municipal House
The painting in Rieger Hall of Prague Municipal House

プラハ市民会館の中で最も有名なのはアルフォンス・ムハが手がけた市長の間(Mayor’s Hall)だろう。『スラヴの連帯』と題された丸い天井画を囲むようにして、壁には8人の歴史的人物と、民族の歴史や独立に向かって毅然と立ち上がる青年の姿などが描かれている。ムハはこの部屋の装飾を無償で引き受けたという。

Mayor’s Hall of Prague Municipal House, all the work of Alfons Mucha
“The Slavonic Concord” painted by Alfons Mucha : the ceiling painting in the Lord Mayor’s Hall, Prague Municipal House
Murals by Alfons Mucha in the Mayor’s Hall, Prague Municipal House
The chair decorated by Alfons Mucha in the Mayor’s Hall, Prague Municipal House

19世紀に活躍したチェコの歴史家・政治家フランティシェク・パラツキーの名が付けられたパラツキー・ホール(Palacký Hall)。壁と天井の絵は画家ヤン・プレイスレルによるもの。穏やかな田園風景とくつろいだ様子の人々、入浴する女性や白馬に乗った男性などが描かれていて、地上の楽園を連想させる。

Palacký Hall of Prague Municipal House

市民会館建設の主唱者、市民連盟のために作られたグレーグル・ホール(Grégr Hall)の装飾は画家フランティシェク・ジュニーシェクによるもの。壁と天井に広がる寓画には人の生から死までの物語が描かれている。部屋名はジャーナリストであり政治家でもあったユリウス・グレーグルから付けられたそう。

Grégr Hall of Prague Municipal House

アール・ヌーヴォーとアナトリア美術に触発されたという東洋の様式が調和するオリエンタル・サロンは、チェスやカードなどのゲームを楽しむための空間として作られたそう。テーブルや棚などの調度品にもユニークかつ丁寧な細工が施されている。

Oriental Salon of Prague Municipal House

面積14.3㎡という小部屋は、チェコの女性作家ボジェナ・ニェムツォヴァーに敬意を表して作られた女性用の休憩所だという。角にはモザイクによって装飾された噴水があり、窓際には小さなテーブルと椅子が置かれている。

Small fountain in Božena Němcová Parlour of Prague Municipal House

漆喰の壁と天井に施された装飾がまるでお菓子の上のクリームデコレーションのように見えることから「コンフェクショナリー」と呼ばれる休憩室。大理石と鏡がふんだんに使われている室内は明るくてスタイリッシュな印象。映画の撮影などにもよく使用されるのだとか。

The ladies’ parlour called “Confectionery” in Prague Municipal House

最後に見学したのは、プラハ交響楽団の本拠地スメタナ・ホール。ステージ上にある世界最大級のパイプオルガンの真ん中にはベドジフ・スメタナの横顔が。天井には採光窓が設けられていて、豪華な装飾が施された空間には美しい色と光が降りそそぐ。

Smetana Hall, represents the largest area of Prague Municipal House.

煌びやかな装飾が施されたプラハ市民会館のファサード。美しいモザイク画のちょうど真下にあたるバルコニーのある部屋が、アルフォンス・ムハがすべての装飾とデザインを手がけた「市長の間」。

Prague Municipal House’s facade

ご一緒した女性はアルフォンス・ムハが大好きだという。そこで「ここのメニューにもムハの絵が描かれていますよ」と市民会館内のアール・ヌーヴォー・カフェへ。甘さ控えめのチョコレートケーキがウィーンで食べたものよりも口に合うと喜んでもらえた。

Art Nouveau interior decoration of Kavárna Obecní dům
The menu book of Kavárna Obecní dům